はじめに

文:美術家 佐倉康之

達磨を描く!

それは自分の「こころ」のキャンバスに浮かぶ七転八起の気持ちを表出させる儀式のようなものだ。

誰の為でもないし、何の為でもない。

いや、誰の為なのか、何の為なのかは本人のみぞ知る世界だろう。

如何なる事があろうとも、唯、真白な地に立ち、自分なりの筆で未来を描く事だ。

蒲生哲さんが陸前たかだの「八起」の名に込めた思いをみんなでみつめたい。

そしてそれを応援したい。

[経緯ーいきさつー]

- 陸前たがだ八起プロジェクトに「変動式ロゴ」を提案する -

立ち上げ申請中の非営利団体のロゴデザインをお願いします!これもなにかの縁ですから」
熱っぽい顔の蒲生さんから出会うや否や言われた言葉だ。

デザイナーでもないロゴデザインもやらない私に、何を感じてそのような大事を託すか、
中越災害チームの、諸橋和行君が陸前高田のモビリアという仮設住宅で被災者支援を続けている。
尊敬出来る友人の陣中見舞いに立ち寄った際の出来事だ。
ロゴデザインという形に戸惑ったがこれも「縁」という言葉の成せる技と前向きに解釈した。

極寒1月の陸前高田モビリア仮設住宅へ宿泊させていただいた。
そしてあの「3.11」から蒲生さんら被災者の過ごして来たこの10ヶ月を憶い夜は眠れなかった。
轟々と唸る海風の声、闇黒の広田湾、それでも見上げた星空は信じられないくらいの輝きを放っていてジンとした。

「七転八起」の「八起」がプロジェクトの名称だと聞いた。
それで次の朝、「大達磨絵プロジェクト」を「変動式ロゴ」の基盤コンセプトとして提案した。
蒲生さんはしばし考え込むような表情だったが、「よし!やろう」と決意した。

「大達磨絵プロジェクト」とは、大きな画面に墨で達磨を描くというシンプルな行為であるが、
真白な大画面の上に立つと距離感やバランス感を視覚で掴みにくくなり、その結果、心の中の無垢なイメージ図を
「勘」により表出させるといった“アンバランスのバランス美”に期待出来る一種の美術論だ。

蒲生さんの内にある「八起」の達磨の姿を再現させるだけのもの。至って簡単だ。

しかし人は、自分の心の中の形を見せるのには勇気がいる。それに挑むプロセスにアート(感動)が潜んでいる。
デザインは伝える事を宿命としているのならば、その原点に立ち戻ってプロジェクトの代表が自身で「七転八起」の様を描くべきだ。

滑稽でも下手でもいい、熱く挑めばいいんだ。

どんな形が生み出されるのか、それを私は「ロゴ」として企画の顔に提案したいと思った。
そしてそれは不定期ではあるが、「八起」を心に決意する人々に描いて頂き、内なる「達磨」を表出化すればいい。
それで十分に伝わるはずだ。

変動式[八起!大達磨絵ロゴ制作]プロジェクト 発案にあたり

美術家 佐倉康之
http://www.sakurayasuyuki.com/